2022/5/21
2022年6月1日から、米国では、QT(Quantative Tightening)が始まる予定です。量的緩和は、2020年のコロナの危機から、過去最大の量的緩和QE(Quantative Easing)を行い、大暴落した米株市場が大幅に上昇していった件については株式投資されている方はどなたもご存じだと思います。
それでは、これから始まるQTでは、何が起こるかを予想する一助として、前回QTを米国で始めた時に何が起こっていたのか、その状況と考えられるロジックを信頼できそうな当時の記事を調査してまとめてみました。そして現在のQTに関わる状況とも比較してみました。
その時の状況は、今と一緒ではないので、同じ事が起こる保証もないのですが、理解の一助になるかと思い、まとめました。なお、どうすべきかは個々人の判断になります。
注)個人レベルのまとめのため、第三者チェックもなく、正確さは保証できません。ご自身で検証しながらご参照ください。ご指摘あればお問い合わせからお願いします。
- 結論
- 当時の状況
- 前回のQTと今回のQTの差異
- 金利の動き 米国債10年勲利
- 株式指数の動き
- 主なイベントとその背景についてまとめました。
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結論
以下にまとめました。
項目 | 前回のQT | 今回のQT | 備考 |
とりまく状況 | 財政の壁懸念あり | 脱炭素可、コロナによる供給制約 中間選挙あり | |
インフレの状況 | インフレ率は若干2%を越えたレベル | インフレ率は8%台でかなり高い。 | ここが一番の違いの重要な箇所。 |
CRB(国際商品指数) | 下落トレンド | 上昇トレンドでピーク | 現在は過熱 |
2017年9月失業率 | 3.5% 約50年ぶりの低水準 | 現在 3.6% | |
2017年9月GDP成長率対前期比年率 | +2.6% | 4月に6.9% | 現在、経済は良く引き締めやすい環境 |
原油 | ニュートラル | 強い上昇でピーク | 現在は過熱 |
FRB資産規模(QT開始時) | 4兆5000億ドル | 約8.9兆ドル | |
初期のQT規模 | 100億ドル/月 | 475億ドル/月 | 100億ドルは約1.3兆円 今回はより急速 |
その後のQTの規模 | 500億ドル/月 | 950億ドル/月 | 今回はより急速 |
QT手法 | 償還分の一部を再投資することで、緩やかに保有資産の削減を進める | その償還分だけ保有資産の削減を進めるのと、期前の資産を売却するの組み合わせか | 今回はより急速な引き締めの観測、インフレ率が高いため |
金利引き上げペース | 0.25% 穏やかなペース 誘導レンジ2.5%へ | 0.25~0.5%,0.75%も視野 誘導レンジ最終は2.75~3%程度?? | 今回はより急速な引き上げ |
QT後の10年債金利 | 徐々に上昇* | ??? | *金利は最初は2.4%程度から |
QT後のNASDAQ | 徐々に上昇* | ??? | *暴落が二回有。利上げ加速懸念によるVIXショックと、対中制裁、政権不透明より |
QT後の株価見通しについては、強気継続派(途中調整はあり)と弱気派(暴落派)がいいます。今回は前回との環境条件は随分と違います。
10年債の金利については、前回は、QT期間の少し前から上昇していますが、今は直近数週間では逆です。これは金利水準が3%近いとその金利の魅力で買われやすいことが原因と観察しています。
現在NASDAQ指数は暴落しています。
当時の状況
前回の米国でのQTは、2017年の10月~2019年7月まで実施しました。その道のりは長く、FRB は2013年12月にテーパリングを開始しました。テーパリングとは、保有資産の増加量を少しずつ減らしていく事ですが、その時でも量は増えているので、増加スピードは減っているとはいえ、まだ緩和継続状態です。そして2014年10月にテーパリング終了でやっと増加がゼロになりました。そして2019年まで資産残高の削減であるQTを進めるという、約5年以上もかけたオペレーションでした。そして穏やかな利上げ路線でした。
保有資産の規模は、4兆5000億ドルから、3兆7000億ドルへと縮小しました。
この開始時は、
項目 | 紹介 | 備考 |
FRB 議長 | ジャネット・イエレン | 現在の財務菅 経済学者、政治家 元ハーバード,LSE等 の助教授、講師 |
2018年12月 FRB議長 | ジェローム・パウエル | 元銀行家、弁護士 元カーライルグループ共同経営者 |
大統領 | ドナルド・トランプ | 2017年1月に就任~2021年1月迄。 |
2017年9月CPI | 2.2% | 2022年4月は8.3% |
2017年9月失業率 | 3.5% 約50年ぶりの低水準 | 現在 3.6% |
2017年9月GDP成長率対前期比年率 | +2.6% | 4月に6.9% |
2017年9月CRB(国際商品先物)指数 | 約14 | 現在*は28.095 |
2017年9月原油価格 | 約52$ | 現在は110.52$ |
2017年9月NASDAQ 指数 | 約6470 | 現在は11354.62 |
*現在は、2022/5/21時点
経済指標はQTを始める前の意志決定に関わる前の期間を使用しました。
CPIのグラフ
以下のグラフで赤線の2%のレベルがインフレ目標。2月には、2.7%まで上がっていた。今の8%レベルとは大違いだが、この状況でも当時のレポート見ると、「2%を越えてはいけない」とあります。米国は総合指数でみています。以下では、for ALL urban Consumers, not seasonally adjustedのものを利用しています。そもそもなぜ2%なのかとの議論はここでは割愛しますが現在の8%レベルが異常に高い事がわかるでしょう。39年ぶりの高水準です。
引用: Bureau of Labor Statics
指数関連のチャート
CRB 国際商品指数と原油指数、NASDAQ指数をこの9月までの勢いを知るために以下に示します。現在のチャートも併せてご覧ください。
CRB指数のチャート
あんまり過熱してないですね。というより下げています。今とは全く違いますね。
現在のチャート 今の過熱具合がわかりますね。
原油価格のチャート
こちらもフラットな相場で過熱感はありません。
現在のチャートは、過熱していますね、現有は。そもそも脱炭素可の流れがあり、供給制約がある中でコロナが落ち着いた後の需要が大きい為、高騰しています。
NASDAQ指数
右肩上がりに上昇しています。とても安心して投資できそうな感じです。
そもそもの2013年の状況は?
2013年にテーパリングを開始して、金融緩和を修正し始めたわけですが、その時の状況は以下でした。
・年初から住宅や自動車市場が堅調で、失業率などが着実に改善を続けた。
・ブッシュ減税の打ち切りによる景気の悪化が懸念され、財政の壁という懸念があったがそれほど悪影響がなかったと認識された。
・当時のFRBは、テーパリングを慎重に行う予定だった。翌年2月からはイエレン議長に新体制となる。(当時はバーナンキ)
・2013年には政治でメジャーなイベントはなかったようですが、2012年には中国トップに習近平が就任し、米大統領はオバマ氏が再選。金正恩氏が第一書記になりました。
前回のQTと今回のQTの差異
以下、簡単に特徴をまとめます。
項目 | 前回のQT | 今回のQT | 備考 |
とりまく状況 | 財政の壁懸念あり | 脱炭素可、コロナによる供給制約 中間選挙あり | |
インフレの状況 | インフレ率は若干2%を越えたレベル | インフレ率は8%台でかなり高い。 | |
CRB指数 | 下落トレンド | 上昇トレンドでピーク | |
原油 | ニュートラル | 強い上昇でピーク | |
FRB資産規模(QT開始時) | 4兆5000億ドル | 約8.9兆ドル | |
初期のQT規模 | 100億ドル/月 | 475億ドル/月 | 100億ドルは約1.3兆円 今回はより急速 |
その後のQTの規模 | 500億ドル/月 | 950億ドル/月 | 今回はより急速 |
QT手法 | |||
金利引き上げペース | 0.25% 穏やかなペース 誘導レンジ2.5%へ | 0.25~0.5%,0.75%も視野 誘導レンジ最終は2.75~3%程度?? | 今回はより急速な引き上げ |
金利の動き 米国債10年金利
次に、10年債の金利の推移を確認してみます。金利水準は株価に関係してきます。特に現在3%を越えると株が下落しやすいです。QT期間は金利が上昇しています。
株式指数の動き
次にNASDAQ指数を見てみます。$QQQでみます。
オレンジ色で10年債金利も示します。
指数は金利上昇にもかからず上昇しています。ただ、金利は2.4%程度の低位から始まっています。3%を越えても下落は特にないです。
ここで注意は、①、②で大きな下落があります。これが何であったか、次で説明します。両方とも世界同時株安と言われてます。
主なイベントとその背景
①
2018年2月の暴落は、VIXショックと言われてます。1月の雇用統計で、時給が予想上回る伸びを示したり良好な物価関連指標により、FRBの利上げペースが加速するとの見込みが強まり、長期金利が大幅上昇したことが要因です。この時多くのクォンツ系ファンドが急激にロスカットして株価変動を加速された模様です。
②
米国による対中制裁措置の発動や、トランプ大統領の政権運営の不透明さ(ティラーソン国務長官の解任等)から調整した模様です。
今後の株価見通しの声
それでは、QT以降の株価見通しについてはどういう声があるか正反対の物をご紹介します。
- 強気派 今までの実績で米国株は上昇してきたので、調整はあるものの成長をしていく。
- 弱気派 類を見ない金融緩和をして、そして非常に高いCPIとなった為、大幅な下落になる。
https://netbase.xyz/ipo/page-1456/
まとめ
2022年6月1日から、米国では、量的引き締めQT(Quantative Tightening)が始まる予定です。、前回QTを米国で始めた時に何が起こっていたのか、その状況と考えられるロジックを信頼できそうな当時の記事を調査してまとめてみました。
前回と今回では、QTまでの金利の動きとNASDAQ指数の直近の動きも異なる為、5/23からの相場がどうなるかにも注目したいです。
今後の株価については、強気派か弱気派かは意見が分かれていますが、相場で起こっている事をしっかりと観察し、トレンドを確認の上、対応していく事がいいと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。投資は自己判断のもと、自己責任でお願いいたします。
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